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そもそも土田さんとは、ふとしたことで知り合いになったのです。自分が独立するので、このあたりに良い土地がありますか、と尋ねてきたのです。あれから、ずいぶんと時間が経ち、今ではその場所を越して、もっと過ごしやすい場所で仕事をされているのですが、今回のお仕事は、化粧板を使ったお仕事だそうで、土田さんの専門外になると言うことでお仕事を頂いたのです。 そんなわけで、打ち合わせがてらお茶をごちそうになってきました。 そんな打合せの中で、私がずっと前から一つ疑問に思っていたことがあったので聞いてみたのです。 「無垢材だけで作る造り付け収納は、どうなのだろうか。」と。 無垢は良い。それは十分理解しています。でも、木は動きます。生きていますなんて誇大表現はしませんが、木は常に収縮を繰り返します。どんなにうまく乾燥させて使っていても、年月が経てば、動き、小さな歪みが出てきます。木ですから、むしろ動きが出てくるのが当然なのです。よほど、樹脂塗装で表面を固めないかぎりは。 そういうふうに動いた時に、作りつけてしまった無垢材のメンテナンスはどうするのだろうって、ずっと疑問に思っていたのです。 木は湿気を吸収し、吐き出します。その板の片面が、例えば壁などで塞がれている場合は、そちらからは調湿ができなくなり、片面だけが調湿しようとします。それぞれの面の湿度が違うだけで板は動きます。そうすると、板は極端な動きをする可能性があるわけです。 扉が歪んで引き出しがきつくなったりするのではないか、そうなった時にどうメンテナンスするのか、疑問に思っていました。 私たちが普段行っている後付け工事のように完成された部屋に家具を設置するのなら、一度取り付けた家具を全て外すことも可能なのですが、新築工事中に作りつけてしまった場合などは、家具単体だけを壁面から取り外すのはよほど難しいのです。壁や床をを壊さなければならなかったりするのです。 突き板を使ったフラッシュ構造ならそういった外せない場合で起きた歪みでも多少のものは強制しやすく、また歪みが出ても板自体が軽く扱いやすいので、あまり大きな支障が出ることはなく、家具自体に影響を与えることが少ないことが多いのです。 無垢材の場合、木が動いた時の力は、かなり大きなものです。細い材料なら私たちの力で強制できても、広い板となると、一部の歪みが他の板を引っ張り歪ませるだけの力を持っています。 そんな力で大きな箱が歪んだ時に、メンテナンスと言う方法で対応できるのかどうか、作り直すことになってしまうのではないだろうかと思っていたのです。 土田さんもその点は同感だとおっしゃっていました。 「よほどのことがないかぎりは、現在の住環境ではやはり構造体(箱)を作るときはフラッシュ構造の方が優れていると思いますよ。だって、今の住宅はかなりの高気密だから、乾湿が極端なんです。さっきまで湿気ている部屋でもエアコンをつけることで急速に乾燥させることができる。昔の家のように、自然に風が入り込んで緩やかに空気が乾いていく、緩やかに空気が湿っていくと言う環境じゃないから、木にとっては大きなストレスがあると思います。どうしても無垢で構造体を作る時は、うまく通気ができるようによほど工夫しないと、難しいです。」 どういう素材が一番かなんてないんだなあと改めて考えさせられました。その場所に適した素材を選んで、使うことが大切なのですね。 そんなことを考えていたら、昔作ったを家具を引っぱり出していました。 ストック棚に余っていたベイマツの端材で作ったテーブルだけれど、やはり無垢の表情やその使い心地は良いです。反対に(反対じゃないかもしれませんが)、化粧板には化粧板の良さがあります。それぞれの良さを活かし、構造の良さを活かした素敵な家具が作れるようにこれからも努めていこう、なんてふと考えてしまいました。 *フラッシュ構造:無垢材を薄くした突き板や化粧板などが表面に張られた板で、板の内部は、中空構造となっていて、要所に軽く反りのおきにくい素材を用いて板を作る構造
by freehandimai
| 2008-05-10 19:11
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